吉村元男の「景」と「いのちの詩」

(お送りいただいた本から)

吉村元男の「景」と「いのちの詩」 (シリーズ人と風と景と) [単行本]
村 元男 (著)

¥ 1,470

内容紹介
 本書に登場する四つの作品に従事できたことは、風景造園家としてきわめて僥倖な機会に恵まれたからでした。これらの作品が今日までも美しく、いのちの輝きを増しながら、ほぼ設計当時の趣意が保たれ、維持管理され、着実に成熟していることに、それらを訪れるたびに感激し、それらのいのちに感謝の念を禁じえないでいます。

庭園は生命の集合体でできた風景で、人間の赤ちゃんと同じ出発点から始まります。その生命の集合体は、草花、樹木、昆虫、鳥、魚、そして土の中の計りしれない数のバクテリアなどのいのちが互いに絡みあって、一つのたくましい調和のリズムを生み出し、成長してゆくのです。その軌跡は、数多くの人びとの知恵と技と情熱によって導かれたものです。庭園が幾多の風月をへて俗の垢を吸い取り、浄化する力をもって成長してゆくことは、それ自体がいのちの奇跡です。万博記念公園の40年を超える奇跡に歓喜の涙が溢れます。

風景は時代とともに移り変わります。千里丘陵の300ヘクタールの田園・竹林を破壊して開催された1970年の日本万国博覧会の多くのパビリオンは、半年の寿命で破壊されました。その跡地に博覧会開催を記念する公園が誕生しました。自然破壊、パビリオン建設と破壊、そして万博記念公園の自然再生。丹下健三氏の「お祭り広場」の大屋根が取り払われ、岡本太郎氏の「太陽の塔」が残され、その間に万博の森がすくすく育ってきました。万博記念公園は、二度の破壊への鎮魂の風景です。
(吉村元男)

著者について
吉村元男(よしむら・もとお)
風景造園家
1937年、京都市に生まれる。
京都大学農学部林学科造園学専攻卒業。
(株)環境事業計画研究所所長、鳥取環境大学教授をへて、現在、(株)環境事業計画研究所会長、地球ネットワーク会議代表。この間、奈良女子大学大阪大学京都工芸繊維大学鳥取大学などで非常勤講師を歴任。

作品に、「万博記念公園の基本設計・実施設計」(日本造園学会賞)、「鎮守の森の保存修景研究」(環境省環境優良賞共同)、「新梅田シティ」(大阪府都市景観最優秀賞、建設省都市景観大賞共同)、「白鳥公園」(名古屋市景観賞)、「都市公園での功労」(北村徳太郎賞)などがある。

84ページ
出版社: 京都通信社; B5変版 (2013/7/2)
ISBN-10: 4903473716
ISBN-13: 978-4903473710
発売日: 2013/7/2